基礎代謝とは、生命の維持活動に最低限必要とされるエネルギー代謝のことをいいます。
私たちが食事によって摂取しているエネルギーの約60%は基礎代謝によって消費されているといわれています。
ダイエットをしたことのある方は、基礎代謝量を上げるとやせやすくなる、ということを聞いたことがあるかと思います。
実は、基礎代謝をあげるメリットはそれだけではありません。
この記事では、基礎代謝をあげるメリットと、その方法をご紹介します。
基礎代謝とは?
基礎代謝とは何でしょうか?理解いただくために、「新陳代謝」、「基礎代謝」についてご説明します。
その後、「そもそも代謝とは?」「呼吸」などについてもご紹介します。
①新陳代謝
私たちの体内では、古くなった細胞は排出され、常に新しい細胞が作られ、置き換わっています。
例えば、髪の毛が抜けて、新たしい髪の毛が生えたり、古くなった皮膚の角質が垢となって落ち、新しい角質層が生まれたりします。
胃腸の細胞は約5日、心臓は約22日、肌は約28日、筋肉、肝臓は約60日、骨は約90日の周期で新陳代謝されるといわれています。
ちなみに白血球は非常に寿命が短く、10時間程度しかないそうで、毎日骨髄中で約1000億個作られているそうです。
私たちの体全体で考えますと、新陳代謝により約3ヶ月ですべて新しい細胞に置き換わります。
機械でも古くなった部品を新しいものに取り替えることによって、故障なく正常に使うことができますが、私たちの体も同様で、新陳代謝によって自然と古い細胞から新しい細胞へと置き換わり、病気や怪我を防いでいるのです。
②基礎代謝
新陳代謝は古い細胞から新しい細胞へ置き換わることといいました。
基礎代謝は、新陳代謝だけでなく、呼吸や体温維持、血液循環、等々私たちの生命を維持するために最低限必要な体内活動をいいます。
また、それに消費されるエネルギー量を基礎代謝量といいます。
一言にまとめると、基礎代謝量とは私たちの生命維持活動に必要なエネルギー量となります。
成人女性の平均で、1日1,000~1,300 kcal、成人男性の平均で、1,500~1,600 kcal消費されるといわれています。
ダイエットをしている方にとっては、基礎代謝量を把握しておくことは重要です。
基礎代謝量+運動による1日の消費エネルギーを、食事で摂取するエネルギーが下回るか、上回るかで成果が変わってくるからです。
最近の体重計の多くに基礎代謝量測定機能がありますし、「基礎代謝量」「計算」で検索すると、計算サイトを見つけることができますので、ぜひお試し下さい。
※ 計算には、体脂肪率の値が必要です。
③代謝
そもそも、代謝とは何でしょうか?
それは生物が自身の生命を維持するために行う化学反応です。
代謝は、食事を摂取して消化することにより、エネルギー源と新しい細胞の材料を得る異化反応と、そのエネルギーと材料を使って新しい体の部品(タンパク質など)を作り出す同化反応の2つの反応で成り立っています。
異化反応では、食事を摂る際に、お米や小麦粉などの炭水化物をブドウ糖、最終的には二酸化炭素と水へ分解し、その際出てくるエネルギーを細胞内に貯蔵します。
また、肉・魚などのタンパク質をアミノ酸へ分解し、自身の体を構成する部品となるタンパク質の原料としてアミノ酸を蓄積します。
同化反応では、異化反応で得られたエネルギーと原料を使って、タンパク質などを生産し、新しい細胞を製造して、古い細胞と置き換えていきます。
④呼吸
代謝には異化反応があり、炭水化物などを分解してエネルギーを獲得するといいましたが、その際に必要なのが呼吸です。
少々難しい理科のお話になりますが、炭水化物をブドウ糖、さらに二酸化炭素と水にまで分解する際、電子が飛び出します。
その電子が移動することによって、電気的にエネルギーが取り出され、体内に蓄積されます。
そのエネルギーが取り出された後の電子を最終的に引き取るのが酸素であり、その酸素を空気中から体内に取り込むのが肺呼吸です。
⑤自律神経
自律神経とは、循環器系、消化器系、呼吸器系など、生命活動に必要な組織の活動をコントロールしている神経です。
自律神経には2種類あり、昼間、私たちが起きているときに活発になる交感神経と、安静時や夜に活発になる副交感神経があります。
私たちが寝ている間でも、副交感神経が働いて、呼吸や血液循環、新陳代謝、体温維持、つまり基礎代謝が行われています。
自律神経は基礎代謝に不可欠であり、異常をきたすと、生命維持活動に支障をきたすため、とても重要な神経だといえます。
⑥代謝の研究でノーベル賞
2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典先生のご研究は、「オートファジー」というものでした。
オートファジーとは、日本語では自食作用と呼ばれ、細胞に栄養が供給されず飢餓状態になったときに、細胞内で自己のタンパク質を分解してリサイクルする現象をいいます。
生命活動を維持するためには、細胞内のタンパク質リサイクルによる新陳代謝が必要であり、その現象を発見、解明したのが大隅先生です。
断食(ファスティング)をすると、身体中の細胞が飢餓状態となり、オートファジーというメカニズムによって、細胞内のタンパク質リサイクルが活性化され、新陳代謝が促進される、といわれています。
つまり、栄養が外部から供給されなくても(食事制限ダイエットしていても)、新陳代謝が進む(お肌がきれいになる)、ということを発見、証明した日本の研究者が世界から高く評価されたということで、日本人として非常に誇らしいですね。
基礎代謝を上げるメリット!
基礎代謝は生命活動そのものですが、それを活発にして基礎代謝量(エネルギー消費量)を上げると、様々なメリットがあります。
①ダイエット効果
ダイエットをしたことのある方はよくご存知かもしれません。
私たちは、食事によりエネルギーを摂取し、基礎代謝や運動によりエネルギーを消費しています。
エネルギー摂取量が消費量を上回ると、その分が脂肪等などになって蓄積され、体重が増えます。
逆に消費量が摂取量を上回ると、食事だけでは足りなくなり、体内で脂肪などとして蓄積されていたエネルギーが使われ、体重が減ることになります。
ダイエットは、いかにエネルギー消費量が摂取量を上回れるか、というエネルギーマネジメントともいえます。
さて、エネルギー消費量のうち、基礎代謝による消費は約60%以上といわれており、つまりダイエットでは基礎代謝をあげるというのは非常に重要になります。
②美容効果
基礎代謝があがると、新陳代謝が活発になります。
皮膚の細胞の置き換わりも速くなりますから、お肌の状態がよくなります。
お肌だけではなく、髪の毛や爪なども新陳代謝により、よくなることでしょう。
③冷え性、むくみ、肩こり、腰痛
基礎代謝があがると、血液の循環がよくなり、体温調節機能が活発になり、これまで体温が低かった方でも体温があがることが期待されます。
また、血液循環がよくなり、リンパの流れもよくなるので、余計な水分が排出され、むくみも解消されます。
同時に、乳酸などの疲労物質も排出されるので、肩こりや腰痛もよくなるといわれています。
④虚弱体質
風邪を引いたり、疲れやすく、体調を崩しやすい方は、基礎代謝が低い、あるいは自律神経の不調が原因といわれています。
基礎代謝があがると、白血球の新陳代謝も活発になり、免疫力がよくなり、体質が改善されることが期待されます。
また、基礎代謝が活発になることで、自律神経の不調が改善される可能性があります。
基礎代謝を上げる方法とは?
基礎代謝を上げると健康面、美容面で様々なメリットがありますが、それではどのようにすればあがるのでしょうか?
①腹式呼吸
さきほどご紹介したとおり、代謝には酸素が必要であり、そのため呼吸は重要です。
酸素を多く取り込むことは、代謝を活発化させます。
逆に酸素が不足すると、代謝が滞ります。
そこで、腹式呼吸をする習慣を身につけましょう。
一般的な胸式呼吸は、肩を上げたり胸を広げたりして、肺に空気がはいるスペースを確保する呼吸ですが、腹式呼吸は肺と胃の間にある横隔膜を下げることで、肺に空気が入るスペースを作ることができます。
腹式呼吸の方が大きなスペースができるため、一度に多くの酸素を取り込むことができます。
一方、胸式呼吸は一度に取り込める酸素が少ないため、呼吸が浅く、速くなる上に、肩や胸、ひいては喉に力が入って緊張します。
腹式呼吸はそのような緊張がないため、リラックスできるといわれています。
多くの酸素を取り込むことで基礎代謝が活発になるとと同時に、リラックス効果で自律神経もよくなることが期待されます。
②ヨガ、柔軟体操
ヨガや柔軟体操により、体が柔らかくなると、その分血液やリンパの流れがよくなり、基礎代謝がよくなります。
特に、股関節は上半身と下半身をつないでいる場所であり、ここの柔軟性は重要です。
股関節が硬いと、基礎代謝だけでなく、骨盤や姿勢のゆがみにもつながり、腰痛や肩こりがひどくなりかねません。
股関節のストレッチを重点的に行うなど、体を柔らかくするようにしましょう。
③食事
良質な栄養を摂取することは基礎代謝に重要です。
特に一日のはじまりである朝食はできるだけ摂る方が望ましいです。
ダイエット中の方は炭水化物を控えているかもしれませんが、午前中から仕事や学業の効率をあげるためにも、ごはんとあたたかいお味噌汁か、パンとあたたかいスープを毎日摂ることをおすすめします。
④入浴
一日の最後に、入浴することは基礎代謝をあげることにつながります。
体をあたため、リラックスすることができるからです。
ぬるめのお湯に半身浴でできるだけ長時間入浴するとよいでしょう。
⑤運動
適度な運動により、基礎代謝が活発になります。
特に、有酸素運動を定期的にすると、酸素が体内に行き渡り、体内の細胞の呼吸が活発化することをきっかけに、基礎代謝があがっていきます。
無理のない範囲ではじめて、習慣化し、徐々に運動量を増やすとよいのではないでしょうか。
⑥筋力トレーニング
筋肉が増えると、その分を維持するために基礎代謝があがるといわれています。
有酸素運動の量を増やしていくと、自然と筋肉もついてきますが、それ以外に筋力トレーニングを行うと、さらに基礎代謝があがります。
基礎代謝をあげる運動をしよう!
基礎代謝をあげる方法として、運動をご紹介しましたが、その具体的な方法をご説明します。
①ウォーキング
ウォーキングは代表的な有酸素運動であり、誰もができる運動です。
また、足の裏が刺激され、血行がよくなるという効果もあります。
ただ、もしダイエット効果を期待している場合は、30分以上行わないと効果が現れないといわれており、毎日できるだけ長い時間ウォーキングをする習慣をみにつけましょう。
②ジョギング
ウォーキングと同様、誰でもできる有酸素運動です。
誰でもといいましたが、距離が長いと、疲れてしまい、継続できなくなります。
20分~30分程度、ゆっくりでよいので、できるだけ毎日走ることが望ましいです。
なお、ウォーキングとジョギングは毎日両方ではなく、どちらかで結構です。
③サイクリング
サイクリングも有酸素運動です。
特に太ももの筋肉に負荷がかかり、禁猟トレーニングの効果もあります。
できれば毎日30分程度以上が効果的といわれています。
通勤・通学を自転車にするなど、習慣化を心がけましょう。
④水泳
水泳も遠泳は有酸素運動といわれています。
できるだけ長い時間、ゆっくりと泳ぐことで効果があります。
体全体の筋肉を使い、呼吸も深くすることになるので、基礎代謝をあげる効果はかなり期待できます。
基礎代謝をあげるにはスクワットが効果的って本当?
本当です。
人間の筋肉の中で、太ももの筋肉が最も大きいといわれており、それを鍛えて大きくすると、その分エネルギー消費量も増え、基礎代謝があがります。
太ももの筋肉には、大腿四頭筋やハムストリングがあり、それらを鍛えるにはスクワットが効果的です。
ポイントとしては、回数よりも、1回の姿勢を重視してください。
背筋が曲がっていたり、股関節が曲がっていなかったりなど、姿勢が悪いとむしろ偏って筋肉がついたり、背筋がゆがんだり、マイナスの効果が出てしまうかもしれません。
最初は少ない回数で、正しい姿勢を心がけましょう。
基礎代謝をあげるツボってあるの?
あります。
中脘(ちゅうかん)、気海(きかい)、三陰交(さんいんこう)などいくつか知られています。
しかし、ツボ押しは正しく行われないと、逆効果が出る恐れもあります。
妊娠中や発熱中、飲酒直後など、押してはいけない時間帯もあります。
自己判断ではなく、鍼灸師などの専門家のご指導を受けてから行うことが望ましいと考えます。
ま と め
基礎代謝とは、生命活動そのもので、それをあげることは、健康だけでなく美容にも効果が期待できます。
食事による栄養摂取と適度な運動を毎日こつこつと継続することが大切です。
食事も運動も楽しく行うことができれば、継続もできると思います。
その結果、健康で美しく、人生を楽しむことができるのではないでしょうか。